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日本でのコロナ感染者が急激に増えはじめる前、私はあるニュースをみてとても悲しくなった。それは日本より先にコロナウイルスが蔓延していたヨーロッパのある国において、日本人を含む旅行中だったアジアの人々が、現地の人々から差別的な言葉を言われたり、ときに暴力的な扱いを受けてたりしている、というニュースだった。そのとき私は、「なんでそんなことをするのだろう、ウイルスは誰のせいでもないのに」と思っていたが、日本でもコロナ感染者が増え、自分の生活する街からも感染者が出た今なら、私にも少しそのヨーロッパの人々の気持ちがわかる気がする。確かにウイルスは怖い。我々の目では存在を把握することもできなければ、話している相手の体の中にウイルスがいるなんてことはなおさらわからない。だから人々は必要以上に外の世界に気を遣い、ときに敏感になるようになった。そしてその敏感さのベクトルが間違った方向に独り歩きして、人を傷つけるような言動をとってしまうのだろう。でもウイルスより先に人間のこころまで心までも傷つけてしまうそれは、ウイルスより卑怯で、残酷だと私は思う。新型コロナウイルスの世界的流行によって、我々はある意味歴史の転換点に立っているといっても過言ではないが、その中であっても、今まで何億という人間が作り上げてきた人間にしかできない“相手の気持ちを考えられる心”というものを我々の世代で崩してしまうことは、決してあってはならないことであり、私自身もその心をいかなる状況であっても持ち続けていきたいと思う。