パンデミックにより世界で起こっている様々な困難の1つとして、陽性者やその関係者に対する差別が挙げられる。この問題はそれぞれの国の発展度合いに関わらず、どこででも起きうるものだ。実際私が住む県でも問題になったことがある。保健師差別だ。保健師や保健所で働いている方は、陽性者の行動歴を聞いたり相談に乗ったりはするものの、基本的に全て電話でやり取りをするため、陽性者と直接話すなどの機会はない。しかし県民が、接触しているものとして勝手に思い込んでしまったのである。そうしたことから、保健師がいる家族を地域のコミュニティに入れまいとする事例が発生しているそうだ。誹謗中傷を受ける対象はもはや陽性者のみではなく、広がりつつあるというのだ。そしてまた広がっているのは対象だけでない。差別の輪、範囲も拡大しているように思う。国を越えての差別が発生しているのである。日本人が海外で石を投げられたり唾をかけられたりといったケースもあったらしい。また逆に、日本人が海外の人に酷いことをしたケースもきっとあるのだろう。
では私に出来ることは何か。それは周りに溢れている情報に惑わされない、鵜吞みにしないこと。そして想像力を働かせることだ。ここでいう想像力は偏見に繋がるような一方方向の勝手な想像のことではない。情報を手にしたときに、「自分にはこう思える。でも本当はこうなのかもしれない。」といった、様々な方向へ伸びる想像力だ。これはこうだと思っていることも、実際に現場に行って目にすれば違うかもしれない。この人はこういう人だと思っていても、その人に会って話せばイメージと全く違う人かもしれない。ただ、今の状況下では現地に赴くことも、人に直接会うこともできない。だからこそ想像力なのだ。こうかもしれない、ああかもしれないと考えることが、寛容の輪を広げる第一歩だと思う。1人1人の想像力が、1人1人を守る力になるだろう。