『二酸化炭素排出の需要』
先日、スターバックスが繰り返し使えるカップの実証実験を開始した。紙コップ提供時よりもCO2排出量が少なくなるようだ。社会全体として廃棄物の削減が注目されているように感じる。私自身もレジ袋有料化以前と比べて、廃棄物削減を意識するようになったように感じる。
しかし、工場などからものすごい量の煙が出ているのを見ると、個人の努力など足元にも及ばないように感じてしまう。いくら環境に配慮しようと努力しても、あの量の煙を見ると絶望する。
実際、個人の努力には限界がある。一世帯あたりの年間CO2排出量は3971kgなのに対し、日本全体のCO2排出量は11億794万トン(https://www.jccca.org/より)。雲泥の差である。またこの3971kgのうち、ごみの廃棄によるものはわずか3.8%である。この数字を見てしまうと、個人がごみを減らすことによって環境のためになるなど考えられない。仮に日本人全員がごみを一切捨てなかったとしても、それで変化するCO2排出量は11億794万トンのうちのわずか0.5%である。足元にも及ばない数字である。
では、私たちにできて、なおかつCO2排出量の数字を大きく変える手段はないのだろうか。私は、全体のCO2排出量の約35%を占めている産業によるCO2排出に注目した。さきほど述べた工場からの排出などである。これは一見私たちに全く関係ないものに見えて、私たちの意識によって変わるものである。
冒頭で書いた再利用可能なカップやエコバック。このようなものを使うと、廃棄によるCO2排出を削減するだけでなく、使い捨てのカップや袋を作っている企業からのCO2排出量を削減することにもつながる。仮に、日本国民全員が使い捨てのものを使わなくなれば、それらを作っている工場の需要はなくなる。そうなると企業側も、工場の規模縮小や再利用可能な商品の開発に力を入れるようになり、結果的に工場からのCO2排出量は減るはずである。
また、商品の素材もポイントである。プラスチックの場合、廃棄するときに燃やされると、大量の温室効果ガスが発生する。また、プラスチックの原料である石油は採れる量に限りがあり、資源の枯渇も心配される。
「Allbirds(オールバーズ)」が開発した「ツリー」は、主にユーカリの繊維で作られたスニーカーだ。環境に配慮した方法で材料を調達し製品を制作していることから、FSC認証を取得している。製造元のオールバーズ社は、温室効果ガス排出量をゼロにすることで、持続可能な未来を築くことを目標にしている。このような環境に配慮している企業の製品を買う人が増えれば、そのような企業・製品の需要が上がり、社会全体が環境に配慮したものを作ろうという流れになるはずだ。
再利用できるものを使いごみを減らすことは、廃棄の工程で発生するCO2の排出量を減らすだけでなく、製造元の企業が環境への配慮を考えるきっかけになり、最終的に産業によるCO2排出量を削減することにつながるはずである。企業からすれば私たちは「お客様」であり、私たちが環境への配慮をするようになれば、企業側も必ず何かしら行動をとるはずである。