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プライマリヘルスケアとは、いかなる人々にとっても健康は基本的人権であることを認め、それを達成するプロセスで住民による主体的参加、および自己決定を行う権利を保障した方法論のことです。
その地域の住民自身の力によって諸問題を解消するために、平等で総合的な観点から解決法を見つけていく方法論、アプローチ法のことも指します。プライマリは、「最初の」「最重要の」「根本的」といった意味を表し、「住民たちにとって最も身近となる」というような意味合いも含んでいます。また、ヘルスケアというのは「健康づくりへ取り組んでいくこと」という意味を持ちます。言い換えれば、プライマリヘルスケアは「住民にとって最も身近である地域の、最重要で根本的な、健康づくりへの取り組み」とも解釈することができます。
プライマリヘルスケアは、1978年にカザフスタンのアルマ・アタにおいて開催された、世界保健機関(WHO)と国際連合児童基金(UNICEF)との合同会議での宣言文によって最初に定義されました。これはアルマ・アタ宣言と呼ばれ、歴史的な宣言とされています。
アルマ・アタ宣言は、どちらかというと開発途上国における健康水準を向上させることを目指したものでしたが、日本も含めた先進国での健康施策に対しても大きな影響を及ぼしました。こうした方法論は、時代が変化すると同時に発展しつつ継承され、1948年の世界人権宣言や1966年の国連社会権規約などに謳われている「人権としての医療」という思想も受け継いでいます。
先進国の中でも、西欧の国々やオーストラリア、そしてカナダなどにおいては、地域医療をより効率よく運用していくためにプライマリヘルスケアの考え方が重視されてきた経緯があります。日本では、戦後の長野において地元の病院が行ってきた農村地域における取り組みがプライマリヘルスケアのモデルケースとなりました。この取り組みは、住民が主体的に参加する形の保健活動で、病気の予防を重視して試みられてきた取り組みでした。
2000年を到達目標に掲げられていたプライマリヘルスケアですが、達成することができずに終わったことによって批判を受け、理論的な面でも現場において論争が起きたりもしましたが、WHOや汎米保健機構(PAHO)では、世界規模で保健に関する課題を達成するためにもプライマリヘルスケアの理念を改めて肯定し、さらなる取り組みを行う姿勢が示されています。