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囚人のジレンマとはゲーム理論の用語の一つです。個々にとって最適と考えらえる選択が、全体において最適な選択にはならないとされるモデルであり、マーケティングでは価格戦略において取り上げられることが多いものです。
1950年にメリル・フラッドとメルビン・ドレシャーが考案し、さらに顧問であったアルバート・W・タッカーが定式化したとされています。これはもともと、2人のプレーヤーが登場するゲームがもとになっています。2人はある犯罪に関わったとされ、別々の部屋で尋問をされていますが、決定的な証拠は無い状態です。そしてここに、2人ともが自白した場合は2人とも懲役5年・2人とも自白しなかった場合は2人とも懲役2年・一方が自白して、もう一方が自白しなかった場合は、自白した方が無罪となるが自白しなかった方が懲役30年という条件が2人にそれぞれ提示されます。このような条件が追加されると、2人にとって最善の選択が「自白しない」ということにも関わらず、それぞれの立場としてはより合理的な「自白する」ことを選択してしまうというジレンマが生じてしまうのです。
これはマーケティングにおいても同じようなことが言えます。価格競争において、企業の意思決定をするとき、市場全体を考えれば自社も競合も「値上げ」を選択し、全体の利益を最大化することが最良です。しかし、実際にはどの企業も一人勝ちすることを考えて、自社にとって合理的な「値下げ」をすることを選択します。さらこの「値下げ」に対抗して更に「値下げ」は加速するので、市場全体の利益自体は小さくなってしまいます。これが価格戦略においての囚人のジレンマです。実際の市場においては、複数の企業が関わっているため、これよりももっと複雑なモデルとなります。
囚人のジレンマの実際のケースとしては、第二次オイルショック後の大不況が挙げられます。大不況の中、当時の通産省は各社の協力によって減産を進め、少しでも価格の維持を図ろうとしました。しかし、自社が減産しないという選択が合理的だと選択した企業が多く、設備の休廃止などを行う企業はほとんどありませんでした。
この囚人のジレンマを回避するためには、「裏切れば報復される」といった罰則を提示したり、「約束を守れば報酬を与える」といったサイド・ペイメントを提示することが考えられています。また、これが繰り返されれば互いに協力することが全体にとって合理的であると気付くことができます。