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この運動は、各市町村が世界に通じる特産品をそれぞれ1品ずつ生み出し、世界市場に売り出すことで地域経済を活性化させる政策です。大分県内だけでシイタケや豊後牛など300を超える特産品を生み出し、その総生産額は1400億円に達しています。また、この運動はジェトロなどを通して発展途上国にも波及しました。
この運動を最初に推進したのは1979年当時に大分県知事をやっていた平松守彦知事で、大分県内で1961年頃から行われていたNPC運動から着想を得て、この一村一品運動を考案し、同県内の他の地域にこの運動への参加を呼びかけたのが始まりです。平松知事が着想を得たNPC運動の特徴は、生産する農産物を収益性や生産性、その土地の地形などに基づいて選択するというものでした。実際、2005年に大分県日田市へ編入合併された旧・大山町では、山間部の田園を活かして栗や梅などを栽培し、またその梅を付加価値の高い梅ぼしへ加工することで農家の収益の向上に成功しました。さらに平松知事がそこから発展させた一村一品運動においては公的機関の役割は、技術支援やマーケティング調査、住民の自主性を損なわないレベルでの技術指導や人材育成など支援育成に限定されており、主導的役割を住民自身に任せるという点が大きな特徴になっています。それに加えて、この運動を通して地域の活性化に貢献できる人材を育てていくことも長期的な狙いとして定められています。
平松知事はこの運動を推進する上で次のような理念を掲げています。1つ目は「ローカルにしてグローバル」、2つ目が「自主自立・創意工夫」、3つ目が「人づくり」の3つです。これらの理念は行政依存や過疎化の進行などで苦しむ地方自治体を活性化するのに全て必要な要素であり、世界に通じる大きな普遍性を持っています。また、これらの要素を分かりやすくシステム化して誰でも行えるようにし、実践を通して国内または世界へ紹介したことが平松守彦知事の最大の功績であるといってよいでしょう。
大分県の成功で、この一村一品運動は全国的に知られるようになり、熊本県などでも同様の政策が実施された他、同じアジアでは台湾の一村一品運動、タイの一村一製品運動などにも大きな影響を与えました。またジャイカやジェトロ、経済産業省などがアジアとアフリカの各国で一村一品運動を支援・推進しており、アフリカのマラウィではこの運動の生産者団体が100を超え、それに携わる人が3万人近くに達するなど着実に成果を上げています。