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構造調整改革(SAP)は1980年代初頭に、深刻化する累積債務問題を受けて本格的に取り入れられるようになった政策で、債務国における構造調整を目指した融資が実施されるようになりました。国際通貨基金ではできる限り短期間のうちに経済を安定化させることを重視し、一方で世界銀行は中長期を視野に入れた経済成長に重点を置いていますが、旧ソ連や東欧諸国、第3世界における民主化や市場経済化などの戦略には共通点があります。
具体的な政策としては、経常赤字および財政赤字に対する削減、公共部門の規模縮小と経営効率化、価格や貿易に関する自由化、為替レート切り下げ、貨幣や信用統制などを主旨とした構造改革案が融資の条件としてそれぞれの国に提示されました。自由主義の経済理論の視点から見れば、こうした政策を採用することで該当国の比較優位を促し、輸出は増加します。さらに公的規制が削減されることで民間の力が活用され、市場主導型の経済成長を達成することができるとされています。
しかし、SAPを行うことは、国内投資を低迷させたり、公務員の間で失業が増加したり、貧困層を切り捨てることなどに繋がってしまうという考えから、国連アフリカ経済委員会などで批判も噴出しました。ちなみに、この委員会では1989年に取りまとめた報告書の中で、国内生産力の基盤強化や所得配分に関する公正化、基本的人間ニーズを満たすこと、政策を実施するための機構改革などを主旨として盛り込んだ代替案が提示されています。1987年にユニセフは「世界子供白書」において、対象となる国においてSAPが貧困層の人々の生活に深刻な影響を与えている可能性があると注意を促しました。SAPが行う政策の影響で、人々の栄養状態が悪くなったり、教育および保健サービス水準などが低下するリスクが指摘されたのです。そのため、ユニセフからは、弱者を保護する政策を行政の指針に取り入れることや、成長指向の調整を行うことで短期的にも中期的にも生産や雇用が維持されること、資源の許す限り弱者を守るよう経済を改編することなどの提言がなされています。
SAPは各国で一定の効果をあげたものの、単一の枠組みを各国に当てはめたことの弊害もあり、その後各国のオーナーシップや多様性を重視した開発政策の重要性が指摘される契機ともなりました。