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酸性雨が降ると、河川や湖沼・土壌を酸性化して生態系に悪影響を及ぼすばかりでなく、コンクリートを腐食させたり金属を溶かすことで建造物に被害を与えます。
酸性雨の基準値としては、一般的に雨の水素イオン濃度(pH/ペーハー)の値が5.6以下であることとされています。これは降水時に大気中の二酸化炭素が溶け込むため、純水(中性)のpH7.0より低くなることに起因します。しかしこの基準値には異論も存在し、アメリカなどでは基準値をpH5.0に下方修正しているところもあります。これは火山活動などから排出されるガスの働きで雨のpH値が低下することがあるほか、大気中の様々な非人為的由来の粒子(大気エアロゾル粒子・海塩粒子など)が雨水に溶け込むことにより、場所によって大きく雨のpH値が異なることがあるためです。
日本における酸性雨の原因としては、自国で排出された二酸化硫黄や窒素硫化物だけではなく、海を越え周辺国で排出されたものが季節風や偏西風によって飛来していることにも起因しています。このように、原因となる物質が国境を越えて数百から数千キロメートルも運ばれることもあり、その動向を監視するため世界各国が協力して様々な観測・分析を行っています。国連の専門機関の一つである世界気象機関(WMO)で行われている全球大気監視(GAW)がその代表です。欧米を中心とする様々な地点で大気データの採取や降水の化学成分測定を行い、そこで得られた情報は関係する国際機関・各国政府機関などに提供されています。このように、酸性雨を世界規模でモニタリングし、情報を共有することで地球環境問題に関する科学的な理解を深めるために役立てられています。
また、長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)やヘルシンキ議定書・ソフィア議定書などにより、越境大気汚染防止のための政策が加盟国で進められています。同時に二酸化硫黄や窒素酸化物の排出量削減も宣言し、世界的な取り組みとして注目されています。
このように、世界的問題となっている酸性雨ですが、私たちの日常生活の中でも酸性雨を減らすためにできることがたくさんあります。直接的な防止方法は化石燃料を少しでも燃焼させないようにして、排出される二酸化硫黄や窒素酸化物を減らすことです。具体的には電気の無駄遣いをしない、車を使わず公共交通機関を利用するなど、省エネルギーに努めることが比較的簡単な防止方法です。