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英語では「brain drain(ブレインドレイン)」と呼ばれています。これは、自分の国にいても満足のいく収入が得られないとか、活躍する環境が整っていないというような時に起こります。不景気や政情不安定などが原因になることが多いですが、単に異国の暮らしや冒険を夢見る個人的な価値観で海外に出ていくこともあります。
頭脳流出の現象は、ずいぶん以前からありましたが、世界的に注目されるようになったのは1960年の半ばごろといわれています。その頃、第三世界と呼ばれるアジアやアフリカの発展途上国では、技術者や科学者の育成が必要とされていました。そこで、たくさんの学生が、ヨーロッパやアメリカといった先進国に留学することになりました。しかし、自由で平和な国で生活し、その上よい就職ができれば、自国に戻りたくないと考えることもあったのでしょう。キャリアアップを目指したり、さらなる研究や知識を得る環境が整う先進国に、そのまま残る人が増えたのです。個人の人生に焦点を当てれば特に問題のないことかもしれませんが、頭脳流出は国にとって大きな損失になる問題だと考えられています。優秀な人材が自国で働いて活躍してくれれば、その国の発展に貢献することになります。しかし、海外に出て行かれてしまっては、国の発展は閉ざされてしまうことになるというわけです。優秀な人を失った国では、貧困に拍車がかかることにもなるでしょう。エチオピアなどは顕著な例で、たくさんの医師が育っていますが、そのほとんどがアメリカで生活しているといわれています。そのため、優秀な人材を獲得する「頭脳獲得」が課題にもなっています。
ひと昔前までは、アフリカや旧東ドイツやソビエト連邦などからの頭脳流出が多かったのですが、最近ではヨーロッパからアメリカへの技術者の流出が問題となっており、EU諸国では高度技術者移民を獲得する政策に力を入れています。中国やインドも頭脳流出が激しく、アメリカやカナダ、オーストラリアに毎年多くの人が移住をしています。ちなみに日本に関しては、頭脳流出はそれほど問題化されていません。これは、日本が世界的にみても非常に安全であること、さらに工業大国であることから技術者が活躍する環境が整っていることが考えられます。また、一番大きな問題は言語であり、単一言語を話す日本人にとって、たとえ能力は高くても海外での就職は不利であるということもあるようです。