『衣服ロス〜消費生活と環境問題〜』
皆さんは、「衣服ロス」という言葉を聞いたことはありますか。持続可能な社会を作っていくうえでの課題として「食品ロス」などをイメージする人は多いと思います。
では、なぜ私は食品ロスではなく衣服ロスに着目したのか、それは衣服ロスについて知れば納得いただけると思います。
衣服ロスとは、新品であったり、まだ使えたりするのにも関わらず捨てられてしまう洋服のことを指します。日本では年間15億着以上の衣服が廃棄されており、いまや衣服ロスは食品ロスよりも深刻な社会問題であるとも言われているのです。
より多くの服を売るために過剰に作って在庫となってしまったり、業者同士の取引の過程で必要がなくなってしまったりと、様々な事情から衣服ロスは生まれます。
近年では最新の流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファストファッションの広がりやSNSの影響により衣服の消費サイクルが早まっており、より問題が顕著になっています。
服がごみとして出された場合、再資源化される割合は5%程でほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分されます。その量は年間で約45万トン。この数値を換算すると大型トラック約120台分を毎日焼却・埋め立てしていることになります。
アンケートによると私たちが衣服をごみとして廃棄してしまう理由の殆どは「手間や労力がかからない」からです。労力や手間をかけずに、生活者にもメリットがある形で再利用・資源化を促す手段が求められそうです。
また、単に衣服がゴミになってしまうだけでなく、衣服の生産過程で環境負荷が生まれていることも大きな問題です。衣服を生産するには、原料であるコットンや染色などのために大量の水が必要となります。世界的に水不足となる中で、いずれ半分がゴミになってしまうもののために大量の水を使い、さらに汚染を引き起こしているのです。
では、現状を打開するために今の私たちには何ができるのでしょうか。
今回は買う前、買った後、手放すときの3つの場面に分けてその解決策について紹介していきます。
皆さんはInstagramなどのSNSで「#30wears」というハッシュタグが付いたポストを見たことはありませんか。数年前にイタリアの活動家リヴィア・ファース氏が提唱したこの「#30wears」は、ファッションの環境負荷を減らしたいと考えている人のために作られました。
服を買うとき少なくてもこの服を30回着るかどうかを自問し、100%イエスでなければ購入は見送りましょうというハッシュタグチャレンジです。
皆さんもぜひ、活用してみてください。
服を買った後はこまめにメンテナンスをして服を長持ちさせる、普段から服を大切に使うなどの方法があります。今捨てようとしている衣服も、1年長く着るだけで、日本全体で4万t以上の廃棄量の削減につながるといわれています。これらはいつでもだれでもはじめられるので、気軽に取り組めると思います。
服を手放す際はフリマアプリに出品したり、被災した地域や発展途上国に寄付するなどして、衣服を焼却処分することを減らすことができます。
また、一部のアパレルメーカーでは自社商品に限り、着なくなった服をリサイクル品として回収するシステムを設けてるため、それらの仕組みを活用することもおすすめします。
このように、わたしたちが衣服ロスを減らすためにできることはたくさんあります。
あなたが服を大切に着るだけで、衣服ロスの削減という大きな問題の解決に一歩近づくのです。
持続可能な社会を実現するために、いま私たちにできることから取り組んでいきましょう。