『SDGs達成に向けたバイオエネルギーの利用』
エネルギーは現在、発展途上国だけではなく、先進国も含めて世界が抱える重要な課題と機会の大部分で中心的な位置を占めている。雇用、安全保障、気候変動、食料生産、所得の増加など多くの場面でエネルギーが関与しており、身近な生活では料理、運転する際にもエネルギーは必須となっている。発展途上国では電気を使用できない人々が12億人以上存在している。それゆえに、電気の代わりとして健康被害の恐れのある有害物質を排出する燃料を使用してしまう人々が多くいる。安心・安全なエネルギーを使用できる環境は産業、経済の発展にも繋がると考えられている。しかし、現状の発展途上国ではエネルギーの使用が不十分であり、経済の発展につながっていない。一方で、先進国は化石燃料等のエネルギー供給が増え続けており、温室効果ガスが排出されることによる地球温暖化や気候変動が問題になっている。
私は、大学院で廃棄物からのバイオエネルギー生産を目指した研究を行っている。バイオエネルギーとは、バイオ燃料、バイオガス、バイオマス、その他の種類の生物有機廃棄物など、再生可能な生物資源を用いて生成されるエネルギーのことだ。バイオエネルギーの利用は目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に該当しており、このエネルギー問題の解決策として持続可能なバイオエネルギーを利用するべきだと考えている。
バイオエネルギーの生産には食料・飼料の高騰に影響、農地開発に伴い森林破壊等を引き起こす可能性があるという課題点が存在しているが、農作物等の食料とは競合しない原料から生産した持続可能なバイオエネルギーの利用は、地球規模の気候変動目標や、より広範な環境・社会経済・持続可能な目標を達成するために大きく貢献することが可能だと考えている。
以上より、バイオエネルギー生産の原料に食品廃棄物等を利用することを目指している。バイオエネルギーの生産には原料を糖化させ、その糖液をエタノール発酵させるというプロセスが必須である。原料に全世界で生産量の3分の1が捨てられ、年間約13億トン排出されている食品廃棄物を使用することで、同時にフードロスの改善にも貢献できると感じている。しかし、食品廃棄物等からバイオエネルギーを生産する際には、原料を脱水処理や塩分濃度が高い廃棄物は脱塩処理する必要がある。そのため、多くの作業工程があることによるコスト増加が推測される。したがってコストの削減をするべく、脱水、脱塩処理せずに糖化やエタノール発酵することができる微生物由来酵素を利用し、作業工程を少なくする資源有効利用技術および環境負荷低減型生産技術の開発が課題となっている。食品廃棄物から低コストでバイオエネルギーを生産することが出来れば、再生可能エネルギーの導入率も上昇するだろう。上記の解決策は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と目標12「つくる責任つかう責任」に該当しており、早期の社会実装を目指していきたい。
発展途上国だけではなく、先進国も含めて世界が抱える重要な課題であるエネルギー問題を解決するべく、食品廃棄物からのバイオエネルギー生産を提案する。多量の食品廃棄物からバイオエネルギーを生産することで、発展途上国は安心・安全なエネルギーの使用が可能となり、産業、経済の発展に繋がるだろう。また、先進国も含めて地球全体で再生可能エネルギーを利用することは地球温暖化や気候変動などの問題解決に繋がると考えている。