『医療の格差をなくすために』
日本において医療の格差はあるだろうか。所得、年齢、性別関係なく、私たちは誰でも医療を受けることができる。しかし、今世界中で医療の格差が問題視されている。私が今回研修で行ったカンボジアも例外ではない。
カンボジアは医療の格差が存在する。根拠は、人口に対しての医療従事者が少ない点だ。Graph To Chart「カンボジアの医師人口の割合(推移と比較グラフ)」によると、2014年時点でカンボジアの医師の数は人口1000人に対して0.19人となっている。日本は人口1000人に対して2.34人、アメリカは2.57人、中国は1.69人だ。カンボジアは人口1000人に対する医師の数が世界で第104位で、医師の数が圧倒的に少ない。医師不足が引き起こす問題は様々だ。都心部から離れた農村部では必然的に医師の数が少なくなってしまう。そのため医療機関を受診することが困難だ。都心部には病院もあるが、私立病院のところも多い。そしてこの私立病院の多くは大多数の国民にとって費用が高く、富裕層や外国人のみが利用している。大規模で医療器具もそろっている病院があるのに、多くの国民が利用できていない現状をふまえると、医療を全国民が公平に受けられているとは言えないだろう。
ではなぜこのような事態が起こってしまうのだろうか。医師不足の原因として考えられるのは、教育の格差だ。「カンボジア教育青年スポーツ省,2021年」によると、2020年から2021年にかけてのカンボジアの修了率は、初等教育が87.4%、前期中等教育が48.1%となっている。日本は中等教育までが義務教育になっているのに対して、カンボジアでの修了率は非常に低い。カンボジアでは1970年代にポル・ポト政権が実権を握り、その際子どもたちの教育の場が奪われた。今現在もその名残が残っており、特に農村部などでは子どもたちに十分な教育の機会がない。このようなことから、進学したくても思うように進学できず、結果として人口に対する医師の割合がとても低くなってしまうのではないかと考える。
ではカンボジアのみならず、どうすれば世界で問題となっている医療の格差を解決できるのだろうか。まず一番重要なのは子どもたちへの教育の機会を増やすことだ。農村部では教育の重要性をあまり理解できていない大人が多くいる。そんな大人に教育の大切さを知ってもらうために、村や地域単位で説明を行ったりする必要がある。近くに学校がない地域にも積極的に簡易的な学校を設置すれば、より多くの子どもたちが教育の場を得ることができる。日本に住む私たちができることもある。直接ボランティアに行けなくても、物資や資金を寄付することはできる。直接関われなくても、寄付ならば間接的に援助できる。しかし、それよりも重要なことがある。それは“知る”ことだ。医療の格差の実態を積極的に調べて、周りの人たちに発信していくことで、より多くの人たちが医療の格差の現状を知ることができる。多くの人が医療の現状を知ることができれば、より問題視され、解決したいと思う人が増えるはずだ。
私はカンボジアでの研修に参加したが、途中で体調を崩してしまい入院した。入院した病院でとても良い待遇を受けたが、退院後に私が入院していた病院は私立病院だったと知った。私は医療の格差を実際に体験していたにも関わらず、病院の資料を見なかったらそれに気が付くことができなかった。積極的に調べ、知ろうとすることで私は今回様々な問題に気が付くことができた。私たちができる、問題解決への第一歩は“知る”ことだ。